前回からの続きです。「四つのイドラ」の三つ目は「市場のイドラ」です。“伝聞によるイドラ”ともいうそうです。市場のような人混みで耳にした噂話から、まるで「自分は真相を知ってしまった」という心の興奮に踊らされ、確かめもせずに誤って理解してしまう状態です。これも人間にはよくあるケースのように思います。しかもそれを他の人に伝えたくなって、拡散していくのはありうることで、それだけならまだしも、次第に尾鰭がついてより大袈裟なことやひどい方へ変形していくことも多いですね。最近多いネット上での誹謗中傷も、たまたま出会った情報を謝った形で受け取り、しかも昔の会話による伝聞だけではなく、あっという間に何万人、何百万人へと伝わってしまうこともあるのは本当に怖いですね。
四つ目のイドラは、「劇場のイドラ」です。別名は“権威のイドラ”というそうです。劇場の舞台や立派な寺院など多くの人の前で、権威ある宗教家や政治家、超人気の役者などが説教(語り)と何の疑いもなく信じてしまうようなケースです。そのことが意味すること、その根拠となることなど知ろうともせずただ熱狂する状態は大きな社会の不安定を生むことにつながりやすいでしょう。ある宗教がスタートした時、神と言われる存在はほとんど争いを否定し、より正しい道を求めることを示したはずなのに、いつの間にかこれを信じる人だけが正しくて救われる。それ以外の人の存在は認めるべきではないという論の方が勝ってしまうのです。日本は幸いそういった特定の宗教勢力が国の政治を左右する状況にないですが、世界には民族対立、宗教対立が国の存亡を変える力を持っている怖さがあります。
以上四つのイドラをまとめました。ベーコンは自然の現象や実験の結果を自分勝手な解釈や安易な概念で分析しないために四つのイドラを指摘しましたが、私たちの日々の生活の中に当たり前にこの誤った偏見や先入観があることを忘れてはいけないと思います。特にマスコミの関係者は自分の思い込み優先で、結論が先にあるような取材、情報発信は影響が計り知れないものであることを認識してほしいものです。